クリスマス・ツリー あるいは白い十字架



にわかに、車のなかが、ぱっと白く明るくなりました。

見ると、もうじつに、金剛石や草の露やあらゆる立派さをあつめたような、
きらびやかな銀河の河床の上を、水は声もなくかたちもなく流れ、
その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射した一つの島が見えるのでした。

その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架がたって、
それはもう、凍った北極の雲で鋳たといったらいいか、
すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。

「ハレルヤ、ハレルヤ」
前からもうしろからも声が起こりました。
ふりかえって見ると、車室の中の旅人たちは、
みなまっすぐにきもののひだを垂れ、黒いバイブルを胸にあてたり、水晶の数珠をかけたり、
どの人もつつましく指を組み合わせて、そっちに祈っているのでした。




・・・宮沢賢治 『銀河鉄道の夜』より・・・