「おっかさんは、ぼくをゆるしてくださるだろうか」
いきなり、カムパネルラが、思い切ったというように、少しどもりながら、せきこんで言いました。
ジョバンニは、
(ああ、そうだ、ぼくのおっかさんは、あの遠いちりのように見える橙いろの三角標のあたりにいらっしゃって、
いまぼくのことを考えているんだった)と思いながら、
ぼんやりしてだまっていました。
「ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸になるなら、どんなことでもする。
けれども、いったいどんなことが、おっかさんの幸なんだろう」
カムパネルラは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。
(・・・宮沢賢治 『銀河鉄道の夜』より・・・)